今回のシリーズは面白くも楽しくもない。
ちょっとだけ悲しい話。
私は大学受験浪人1年、留年3年、就職浪人3年という経歴があり、
社会人になったのは同期の人より7年遅れだった。
学習塾には5年勤めた。
そのうち3年間は高校生に化学基礎・物理基礎・数学を教えていた。
他の講師より若かったからか、生徒にはかなり親しまれていたと思う。
私は挫折のプロだったので、殊に浪人生を気にかけていた。
浪人していると精神的に病んでくることを知っているからだ。
週1回、必ず浪人生全員に課題を出した。
「自分の長所を3つ挙げよ」
「大学合格したらやりたいことを書きなさい」
「誰かに挨拶しなさい」
浪人生は自分の悪いところに目を向けがちなので、
偶には良いところや将来やりたいことを書いて希望を持って欲しかった。
あとは難易度が少し高めだったが、
他の誰かに話すことで一人だけでないことを理解して欲しかった。
どうしても最後の課題が無理な生徒には、
私に話しかけても良いということにした。
これらの課題は全て私からだけであり、他の講師はこんなことはしていなかった。
あとは、辛そうな顔をしている生徒の相談に乗った。
私には担当生徒がいなかったので面談や相談する必要性はなかったが、
どうしても放っておくことができなかったのだ。
以降、精神的に脆い生徒を支えるような講師になった。
テストが悪くて泣いた生徒。
周りの目が怖くなった生徒。
それらの生徒のいろんな相談に乗った。
私にできることは全てやってきたと思う。
その甲斐というわけではないが、
メンタルが弱い生徒たちは何とか大学に進学できた。
「1年間よく耐えたね」
「大学に行っても無理せず頑張れよ」
最後に背中を温かい目で見送った。
一講師としてできるのはここまでだ。
あとは生徒が自分で弱い面と向き合いながら生きていくしかない。
生徒が合格して大学に進学すると嬉しかった。
別に私の手柄でも何でもなく生徒の努力によるものだ。
でも、少しは何かの役に立てたような気がした。
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